サクリファイスは、わざと贈るプレゼントです。ポーン、小駒、ときにはクイーンまで差し出すのは、見返りの方が価値があるから。見返りはチェックメイトかもしれないし、数手後にもっと多くの駒を取り返すことかもしれません。相手がすべてを守りきれなくなる局面のこともあります。
サクリファイスはチェスでいちばんドラマチックなタクティクスで、怖がる人もたくさんいます。でも大丈夫。ほとんどは魔法ではなく、見覚えのあるパターンに沿っています。同じパターンを何度か見れば、自分の対局でも見つかるようになります。
本物のサクリファイスと見せかけのサクリファイス
2種類に分けて考えるとわかりやすくなります。
計算されたサクリファイスは、具体的で強制的な見返りのために駒を差し出します。手順の終わりまで見えています。3手でメイト、あるいは駒を利子付きで取り返す、といった具合です。パズルには証明できるはっきりした答えがあるので、パズルのサクリファイスはほぼすべてこちらです。
ポジショナルなサクリファイスは、展開の大差、むき出しのキング、強力なポーンセンターといった長期的な利点のために駒を差し出します。判断が難しく、計算より経験がものを言います。
パズルで鍛えるのは前者。贈り物に見合う強制手順を見つける力です。
サクリファイスが決まりそうなサイン
- 相手のキングの守り駒が足りないか、ポーンの壁がすでに弱っている。
- 自分の駒が明らかに活発で、そのうちいくつかが同じ場所を狙っている。
- 駒を取らせると、キングへのファイルや対角線がこじ開けられる。
- 相手の駒が大事な役目を担っていて、損をしてでもそれを取れば、何かが守られなくなる。
- 捨てたあと、ほぼ毎手チェックか直接の脅威を続けられる。
よく知られた例が、キャスリングしたキングに対するh7でのビショップのサクリファイス。ナイトがg5からチェックで続けられ、クイーンがすぐhファイルに来られるなら、Bxh7+はキングの囲いを引き裂くことがよくあります。この助っ人がいなければ、同じ手はただのビショップ損です。
サクリファイスが失敗するわけ
失敗するサクリファイスには、共通の原因がいくつかあります。
- 強制手が尽きる。 相手に立て直しの静かな1手を与えると、攻撃はたいてい消え、ただの駒損が残ります。
- 守りの手段を見落とす。 チェックで切り返す手、合駒、守りに戻ってくるクイーンが、アイデア全体を崩すことがあります。
- 読みではなく願望で指す。 「相手は怖そう」と「成立している」は別物です。見たい応手ではなく、守る側の最善の応手を確かめましょう。
- 駒の損得を数えない。 何を差し出し、何を取り返すのか、正確に把握しておきましょう。
サクリファイスの練習のしかた
- 見た目が悪くても、まず強制手を。 駒損になるチェックや駒取りも、切り捨てる前に一度見る価値があります。パズルの正解の多くは、ついスルーしたくなる手から始まります。
- 局面が落ち着くまで読み切りましょう。 チェックも駒取りもなくなるところまで読んでから判断します。途中で読むのをやめると、サクリファイスは失敗します。
- 相手の手番なら何をするか考えましょう。 捨てたあとに作る脅威が強すぎて、駒の損得などどうでもよくなることもあります。
クレイのナイト、シュプリンガーからひとこと。真っ先に火の中へ投げ込まれるのは、たいていナイトなんだそうです。チェックメイトのためなら、本人はまったく平気だとか。











